Diamond Geezer (ダイアモンドギーザー)

 ファッション史を語るわけではありませんが、英国はイーストロンドンのサビルロウが近代 テーラリングの発祥とされ、現在も100年を越える老舗が軒を連ねております。彼地にあっても時代の流れは押し寄せ、 閉塞したテーラー界に新風を吹き込むべくオズワルド=ボーディングやティモシー=エベレストといった伝統技術を継承しつつ ソリッドな生地やストライプの組合せに今までにない色を使うことでコレクション的な要素を盛り込んだブランドも登場して きました。しかし、それらはあくまでスーツやジャケットスタイルの域を出ず、テーラリングの技術を活かした新しいスタイル かというとドレス志向の色が濃い物でした。実際イギリスにおいてもアメカジに始まりモッズ・パンクに代表される様に若い 世代からの底上げ圧力が強く、貴族や一部のセレブリティな方々以外、少なくとも休日にはジーンズにTシャツでブルゾンを 羽織ってスニーカーを履いている人が圧倒的に多いのが現状です。それは世の流れ、別に異議を唱えるわけではありませんが 本格的なテーラリング発祥の地で、その綿密なディテールを巧みに組み合わせた上級者の着る英国紳士服の味が日常に見られ ないのは何とも寂しい話です。ではそういうカジュアルシーンで着られるスタイルにロンドンテーラリングを落とし込めない 物か。古く英国では上級服を着こなす大人の男達を敬愛の念を込めて“GEEZER”と呼びました。ただ上等な服を着るのでは なくディテールやカラー等失敗すればかえって格好悪くなってしまう物を敢えて選んで着こなしてしまう個性的な彼等は日本 で言う“傾奇者”的な意味合いで捉えられ日本語訳すると単に変人と訳されてしまうこともしばしばです。 しかし己の美意識を追求するスタイルは伝統を踏まえつつも伝統を打ち破るものでした。そんな“GEEZER”スタイルに今の デザインを吹き込んだ新しいカジュアルスタイル、それが“Diamond Geezer”です。 デザイナーのCaius Olowuはイギリス出身で、LUCHAIM COLLEGE・ LONDON COLLEDE OF FASHION(以下LCF)でメンズ・レディス両方の学位を取得し、98'にはポールスミステキスタイルのデザイン コンサルタントを務め、99'からはイブニングウェアのデザイン、02'からはLCFでメンズ・レディス両方のパターンを含む 3部門での教師を担当する傍ら、LIVI'S UKのメンズウェアのフィットコントローラーを兼務。04'にはRiver Island等複数の メンズテーラーのパターン・フィットコントローラーを担当、05'にはLCFの公認デザイナーになると同時に GOLDEN SHARE AWARD(ファッション大賞のような物ね)のファイナリストに選出されるという輝かしい経歴の持ち主。 07'AWからはトゥルーレリジョンのデニム以外のアイテムのデザインも手掛ける予定だそうです。そんなテーラリングの教師を 務めながらカジュアルブランドのコンサルタントやフィットコントロールもこなす彼が作るアイテムは随所にそのテクニック を散りばめつつもあくまでカジュアルで、大人が日常着るのに相応しい物に仕上がっています。06'AWがファーストコレク ションですが、今後注目を浴びること間違いなしの大物ブランドです。B.A.Tではファーストコレクションから別注アイテムを 中心に展開しています。価格も抑えめなのでミドルレンジの価格帯の中核ブランドになっていく注目株です。

Diamond Geezer Wool Stripe P-Style Double Jacket (税込)¥50,400
Diamond Geezer Cut&Saw 5P PANT (税込)¥15,750
ContinentalCircus CottonMesh Crelic B.D (税込)¥14,800

デビューコレクションの中でもギーザーの特徴を良く表しているアイテムのコーディネート。 あくまで大人のカジュアルを標榜しているのでどうやってもストリートにはならないスタイルなのだが、 それでもカットソー素材のパンツにダブルのジャケットを合わせてブーツを履くというそれだけ聞くと遊び心満載なのにも かかわらずかなり落ち着いた雰囲気になるのはデザイナーの才能に寄るところでしょう。Diamond Geezer Wool Stripe P-Style Double Jacket (税込)¥50,400ファーストコレクションの今回から別注をかけて素材を変えてもらったこのジャケット。 見てのとおり本来英海軍の艦上用コートであるP-コートを細身で綺麗なジャケットシルエットにし、そのシルエットを活かし つつユニークなパターンワークで大人の為のカジュアルウェアに仕上げています。本来はコートである物をジャケットスタイル に落とし込んでいるというネタを活かすべく、P=Pea(元々このコートに使われていた素材)=現在ではネイビーのメルトンを 使っていたのですが(06'10月発売のBiginに掲載されています)、B.A.T的にこのP−スタイルが大好きで調子に乗って何型も 様々なメーカーでやってしまっているので、更に一捻り加えておこうとネイビーのチョークストライプの物にしていただき ました。しかもただネイビーにホワイトでストライプが入っているのではなく、白に並行してミディアムグレーのラインが 影のように入っていて複雑な表情を出している凝った生地です。最初にユニークなパターンワークと書きましたが、これは肩に 剥ぎがありません。背中の生地を胸まで持ってきてあり、更に脇のラインもポケットのところで繋いで横にも剥ぎがないように してある、身体の動く部分に縫い目が当たらない工夫をしつつ綺麗なラインを出すというカイアスの気配りとそれを実現する テクニックが伺えます。ギーザーの代表モデルと言えるでしょう。Diamond Geezer Cut&Saw 5P PANT (税込)¥15,750綺麗なラインの細身のパンツですが、実は裏毛のスウェット素材で出来ています。 しかし見た目にそれを全く感じさせないシルエットでスウェットパンツという部屋着やスポーツに使われるイメージの物とは 全く違う仕上がりです。そもそもカットソーで綺麗なラインを出すのは非常に難しく、ただ細く作って身体に沿わせるだけなら 出来ますが、布帛のパンツと見まごうばかりにラインを出せている物は見かけたことがありません。とくに後のシルエットは 写真の通りの仕上がりで、しかもカットソーだけに履き心地も抜群です。流石に仕事に履いていけるかと言われるとなんですが、 逆にオフならこんな感じのパンツを合わせてみると履き心地も素材自体もかなりリラックスしているのにも関わらず、雰囲気は 大人な匂いを醸し出す程良いカジュアル感になるのではないでしょうか。
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